変わり者の父-1
私の父はとても変わっている。
小さい頃から、物心ついた頃から
私は彼のことが嫌いだった。
世間の幼い娘は、「パパと結婚する」とか
いう子がいるみたいだけど
私には無縁だった。
なにが嫌いなのか、
全て嫌いだった。
小さい頃から父は母によく腹を立て
家の中で怒鳴りちらしていた。
私はそれが嫌いで
始まると怖くてその場から逃げていた。
でも階段の踊り場に隠れたりして
息を潜めながら父が母に怒鳴り散らすのを
震えながらずーと聞いていた。
ときには声を殺して泣きながら聞いていた。
聞くのはつらいのに
聞かずにはいられなかった。
なんでかは覚えていない。
母のことが心配だったのかもしれない。
母のことは好きだった。
「なんでお父さんと結婚したの?」
「お父さんと離婚したら?」
幼稚園児だか、小学校低学年だかのとき
母に聞いたことがある。
本気で父がいない生活を望んでいた。
「もしお父さんと結婚してなかったら
あなたは生まれてなかったのよ。」と
穏やかに母は答えた。
「それでもいいからお父さん嫌だな。」