少女だったころのあなたへ

自己愛性人格障害の父と筋ジストロフィーの母のもとで育った女の子の話。

変わり者の父-2

 

幼稚園児くらいの小さいころ、

 

 

 

ときどき父は私に対して

 

「今日はあなたと喋らないって言ったでしょ

 

話しかけてこないでよ」

 

と突然言ってくる日があった。

 

 

冗談とかではなく、

 

本当に怒った様子でそう言う父を

 

私は当時、不思議に思っていた。

 

 

自分には、父を怒らせた自覚がないし

 

悪気はなにもないから、

 

「お父さん機嫌が悪いのかな」と

 

幼いながらに思っていた。

 

 

 

 

 

 

今、自分が大人になって考えてみると

 

父は幼児や小学生の子供に対して

 

相手のレベル(知能)に合わせた会話や

 

対応ができなかったように思う。

 

 

 

 

幼い子供は悪気なく、

 

自分の空想(理想)と現実が混ざり

 

記憶を上書き保存してしまうことがあると言う。

 

 

 

 

 

だから当時の私も

 

悪気なく父を怒らせることを

 

言ったか、してしまったんだろうと思う、

 

今思えば。

 

 

 

 

 

 

 

また父は、私に関心がなかったと

 

振り返ってそう思う。

 

幼い頃はそんなことも気にせず

 

父に話しかけまくっていた時代もあった。

 

でも父はあからさまに興味なさそうな態度をとる。

 

相槌もつかない、完全に無視をしてくる。

 

 

 

 

 

 

小学校低学年くらいのあるとき

 

「もしかして私の話聞いていないのかな?」

 

と感じ、

 

話を途中でやめてみた。

 

 

 

 

 

 

それでも父は

 

「どうかした?」とか反応を見せることなく、

 

何事もなかった。

 

 

 

私が話そうが話を止めようが

 

父は何事もなかった。

 

 

私の存在は空気みたいだと感じた。

 

 

 

だから私は父に話しかけることが少なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以外は父に怒鳴られた記憶しかない。

 

怒鳴ってくることは、

 

大体いつも私が悪いことばかりだった。

 

 

 

 

キッチンに牛乳を少し溢したのをそのままにしていたり、

 

空になった瓶を洗わずに流しのところに置いたままにしたり、

 

父の荷物を勝手に移動させてしまったり、

 

父がもらってきた大事な書類を裏紙だと思って

裏に絵を描いてしまったり、

 

食事中に無意識に足をぱたぱたしていたら

父の脚に当たってしまったり、

 

そんな日常の些細なこと。

 

 

父に怒鳴られていても、母は私を守ってくれたことは

 

一度もなかった。

 

 

 

 

「そうだ、そうだ、お前が悪い。」

 

と一緒に私を責めた。

 

 

 

 

母はどんなときも父の肩を持ち

 

父の機嫌を損ねないようにしていた。

 

 

 

その場から父がいなくなった後も

 

母は私を慰めることはなく、私を責め続けた。

 

 

母に対しておかしいと思ったことはない、

 

だって父が怒鳴った原因は

 

私がもちろん悪いことを理解しているから。

 

 

 

 

理不尽なことで怒鳴られたことが

 

全くないとも言わないけど、ほとんどない。

 

 

怒鳴られるときはいつも私が悪かった。